2011.12.29

冬眠なんてことをすっかり忘れていて、
池にはカメが一匹も顔を出していなかった。
池の表面を埋め尽くす落ち葉を虫取り網で丁寧に、
しかし一日かけてダラダラやる仕事のようにすくい上げ続けるオジサンは、
サッカーボールを蹴る子供たちに気を取られながら、
「来年4月、5月くらいになったらまた出てくるよ」
と言った。
左胸部が痛くて、無視し続けていたら
夜中の病院に運ばれた。
見慣れた救急外来だったが、
この日はその場に似つかわしくない警察官が二人たっていて
どうやら事故被害者の診断を待っているようだった。
わたしは実際、腰を90度に折り曲げて地面を見据えたまま
時速50mくらいの速さでしか歩けなかったのだが、
警察官の前を通り過ぎるときだけは
なんだか病気のフリをしているだけのような気になってみたりして苦笑する。
もう一つの池に行けばカメが一匹くらいはみつかるのではないかと期待して、道に迷う。
見慣れた街だったがいったん迷ってしまうと、もうそこはどこかになってしまって、
気づくと西日のオレンジ色と建物の影が立体的に街を形づくっている。
着込んだパーカーの内側がうっすら汗っぽくて、困ったなと思う。
左胸部が痛かったなんてことをすっかり忘れて、
小走りして呼吸の荒いまま、
フェンス越しの池の中に小さな二つの穴が空いた鼻を探していたら、
いつのまにか隣に子供が立っていて、
わたしと同じように池面を眺めつづけているのだが、
彼の視線の先もやはりときたま吹く風に落ち葉がゆっくりと移動するだけで、
急に寒くなったような気がして家に帰ろうと思う。
彼がカメを探していたのかどうかはわからないけれど、
「春になったらカメ出てくるよ」
と言う。
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